今日までのフィットネス産業の発展は、対象人口の増加と強い因果関係にありました。これは、ジム、スタジオ、プールといったいわゆるフィットネスクラブにおける「三種の神器」を付帯する総合型フィットネスクラブが、日本の高度経済成長期の終焉直後から2010年までのおよそ40年間で、対象人口増加に伴い飛躍的に施設数をふやしたことからうかがい知ることができます。前提として、総合型フィットネスクラブが全世代を対象とした最大公約数的なビジネスモデルであったことも多分に影響しています。

 

しかし近年、その風潮に陰りがみえてきました。総合型フィットネスクラブは最盛期(1987~1990年)には年間200店舗以上の出店が続きましたが、現在の年間出店数は二桁に届くかどうかといった状況です。一方で小規模フィットネス業態は2005年以降、各社が積極的な出店を重ねており、2017年は300店舗の出店を記録しました。小規模フィットネス業態の出店は今後もますます勢いを増すでしょう。

 

このようにフィットネス産業が総合型フィットネスクラブから小規模フィットネス業態へとビジネスモデルを変えつつある背景の一つとして、対象人口の変化、つまり少子高齢化と人口減少が影響していることについてふれます。

 

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上図の長期時系列データのとおり、日本の人口は1900年から100年で三倍に増えましたが、2060年にはおよそ3,500万人減る見込みです。これは15~64歳の生産人口が2060年までにおよそ3,000万人減少するためで、背景には近年の晩婚化、非婚化の影響を受けた少子化問題があります。

 

少子化問題とフィットネス産業との因果関係として一例をあげると、総合型フィットネスクラブの前身ともいえるスイミングスクールは現在も日本各地で多くの施設が営業を続けていますが、出生数が低下しはじめた1980年以降、スイミングスクール単体での出店ペースは著しく低下しました。しかし、スイミングスクールに代わって台頭した総合型フィットネスクラブの一アイテムとして、現在もスイミングスクールを積極的に取り入れる企業は多いです。

 

他方で、㈱コシダカホールディングスが経営するカーブスは、「女性専用30分フィットネス」を謳い文句に50歳代、60歳代女性をターゲットとして出店を重ね、店舗数は2017年時点で1,860店舗に達しました。これはあくまで一例ですが、前述のように少子高齢化の波は確実にフィットネス産業の趨勢に影響を与えており、フィットネス産業が変革の岐路に立たされていることは明白です。

 

上記のとおりこれまでの成功モデルが通用しにくい変化に富んだ時代でも成功しているビジネスモデルは存在します。その共通点は「立地選定」です。

なぜ集客分析なのか?

フィットネスクラブの成立要件として挙げられる「立地・施設・料金」(集客三大要素)は、規模の大小を問わずいつの時代も必要とされる絶対的集客要素です。消費者にとって最も分かりやすい要素で集客し、「プログラム・クリンネス・サービス」(定着三大要素)で定着させる流れは不動のものと言えます。

 

しかし「立地・施設・料金」に関して常にベストな条件で出店できるとは限りません。出店するには競合対策、業態選定、資金調達、各種社内調整など様々な問題をクリアしなければならないからです。そのため「立地」に対する妥協が生まれることもあります。「この物件は立地がイマイチだけど面積がピッタリだから…」「想定よりも駅から離れるけど家賃が安いから…」といったような理由で、本来最も重視しなければならないはずの「立地」が軽視されてしまうのです。

 

問題は「立地は後から変えられない!」ということです。施設や料金は出店後に手を加えることができますが、立地だけは後から「もう少し駅寄りに…」と簡単に変えられるものではありません。諸条件がよくとも、立地については妥協せず決めることが重要です。

 

立地と商圏を決めたら次に行うことは集客予測です。集客予測は将来的な売上予測です。「この立地で何名の会員を集めることができるのか?」を計算し、出店後の売上を予測します。売上予測ができれば、長期の収支計画を計算することができます。では集客予測とはどのように行うのでしょうか?

 

集客予測コンサルティング

集客予測をしようと出店する立地の商圏を半径5kmと設定した場合、その商圏内の人口(X)におおよその参加率(Y)をかけただけでは正確な集客予測とは程遠いです。なぜなら、そのX × Yの数式には「商圏分断」「競合環境」「民力」などの変動係数が考慮されていないからです。

 

フィットネスクラブの商圏(顧客を吸引できる範囲)を在籍会員データに基づき分析すると、商圏が丸い円にはならずアメーバ状になっていることに気付きます。幹線道路や河川によって商圏が分断されていたり、競合店の後背地からは集客できていなかったり…これらは変動係数として集客予測に影響を与えます。

 

ちなみに出店モデルごとの距離別参加率は実際に営業しているフィットネスクラブの参加率を参考にする必要があります。これから一号店を出店する企業様には中々手に入れにくいデータですが、当社の持つ業態別参加率データを用いれば精度の高い集客予測を行うことが可能です。

 

※集客予測を安価で請負い妥当性のない物件に出店させ、その後のコンサルティング費用で多額のマージンを要求する悪質な業者が増えていますのでご注意ください。